SecurityHeroblog

コマンド1行、3.6秒 — その中に5段階すべてが入っていた

3日連続でTelnetだった完結セッションが、4日目にSSHへ変わりました。侵入者は3.6秒滞在し、コマンドはたった1行でした。

昨日、ある侵入者が私たちのサーバーに 3.6秒 滞在しました。

コマンドはたった1行でした。ところが、その1行の中に見て回ること、ファイルを取得すること、 実行権限を与えること、実行すること、鍵を仕込むことがすべて入っていました。 泥棒がドアを開けて入ってきて家を見て回り、道具を取り出し、裏口の鍵を コピーして出ていくまで3.6秒かかった、ということです。

ところが今回はTelnetではありませんでした

事実 昨日の完結性上位5セッションのうち 3件がSSH でした。

これがなぜ特別なのかというと、8月16日・17日・18日と3日連続で「完結セッションはすべて Telnet」だったからです。4日目にその構図が崩れました。

Telnetは古いプロトコルです。今も開いたままの機器は、たいてい古い ルーターやIPカメラのようなものでしょう。ところがSSHに移ってきたということは、攻撃者が 見ている標的が変わった可能性があるという意味です。

3.6秒の間に起きたこと

事実 ATK-CA5936(130.12.x.x)がSSHログインに成功しました。 セッションは3.61秒、実行されたコマンドは1個。ところが観測された意図は 5種 でした。

  1. 偵察 — システムを見て回る
  2. ファイルのダウンロード
  3. 実行権限の付与
  4. ダウンロードしたファイルの実行
  5. 永続化 — SSH鍵の仕込み

最後の項目が重要です。SSH鍵を仕込んでおけば、パスワードを変えても また入ってくることができます。錠前を変えても無駄になる鍵を1本 作っておいて出ていくわけです。

昨日観測された完結セッションを時系列に並べると、こうなります。

  1. 事実 ATK-CA5936 SSHログイン成功。3.61秒 · コマンド1個 · ダウンロード2件 · 意図5種
  2. 事実 ATK-C146AD Telnetログイン成功。40.80秒 · コマンド16個 · ダウンロード3件
  3. 事実 ATK-103570 Telnetログイン成功。61.75秒 · コマンド17個 · ダウンロード0件
  4. 事実 ATK-CA5936 再登場。13時間27分後、数値が最初のセッションと完全に同一である

最後の行が目に留まります。同じ別名が13時間27分後に戻ってきて、 秒単位までほぼ同じ挙動 を繰り返しました。人間ではなくスクリプトだという 意味です。

どうやって入ってきたか — パスワードです

事実 昨日1日のログイン試行は 975回 でした。 異なるIP3か所以上で観測された組み合わせだけに絞っても、こういうものが出てきます。

ID パスワード 観測されたIP数
admin admin 19か所

この組み合わせ1つを19か所から試しました。特別な脆弱性を突いたのではありません。 ただドアをノックしてみただけです。 そして開きました。

今お使いのルーター、IPカメラ、NASの管理者パスワードが 初期値のままなら — 昨日私たちのサーバーで起きたことが そちらでも起きている可能性が高いです。

残していったもの

事実 セッション3件が 399バイトのOpenSSH秘密鍵 ファイルを残しました。 3回観測されました。

興味深いのは、これまでの3日間で観測された389バイトの「公開鍵」とは ハッシュも異なり、種類も異なる という点です。同じツールを使う 別のキャンペーンか、同じキャンペーンがツールを変えたかのどちらかです。 推定 どちらなのかは、今持っているデータでは区別できません。

sha256
43728fbfb98bb39ff61a2db0fc2905bd6937997062b05b9ab8b186fdee18c09a399バイトのOpenSSH秘密鍵 · 3回観測 · 本日のテーマとなるセッション3件が残した
url
(URL未記録)今回の件は出所が記録されていません

攻撃段階に置き換えると

観測された挙動をMITRE ATT&CK技法に置き換えると、こうなります。 すべて[推定]です — 私たちが見たのは挙動であって、攻撃者の意図ではありません。

  • T1110.001Brute Force: Password Guessing推定
  • T1078Valid Accounts推定
  • T1059.004Command and Scripting Interpreter: Unix Shell推定
  • T1082System Information Discovery推定
  • T1016System Network Configuration Discovery推定
  • T1105Ingress Tool Transfer推定

どこかで見たような気がするなら、その通りです

推定 2016年から続く Miraiボットネット系列 と構造が同じです。

デフォルト認証情報で入り込んだ後、ウェブサーバーの特定のパスからCPUアーキテクチャ別の バイナリをダウンロードし、合うものだけを実行させる方式です。 昨日観測されたファイル名の規則も、その系列の慣習に従っていました。

Miraiは米国司法省の起訴記録が残っている事件であり、複数のベンダーによる 公開分析レポートがあります。10年が過ぎたのに同じ手口が依然として 通用するというのが、この話の核心です。

昨日1日の全体

セッション 1,361件
ユニークIP 216か所
ログイン試行 975回
実行されたコマンド 1,333個
SSH (2222) 1,062件
Telnet (2223) 299件

コマンド1,333個は すべてログインに成功した後に 実行されたものです。

30秒で見る

同じ観測分を短い動画にもしました。

私たちが知らないこと

このブログは、知っていることと知らないことを区別して書きます。 昨日の観測分で確認できなかったことです。

  • コマンド1行に本当に5個の動作が入っていたのか。 意図は5種に 分類されましたが、コマンドの原文とTTYリプレイがブリーフになく、直接確認 できませんでした。複数の動作がつなぎ合わされたものと見られますが、断言はしません。
  • 攻撃者のASN・ISP・国籍。 GeoIP・ASNデータベースを持っていません。 推定しません。
  • ダウンロードされたファイルの出所URL。 今回の件は記録されていません。
  • この3件が同じ組織なのか。 フィンガープリントが同じだということと、同じ人物だという ことは別の話です。

この記事は2026-08-19のハニーポット観測分をもとに作成されました。 IPはマスキングし、引用した認証情報は異なるIP3か所以上で 観測されたものだけを含めています。